2008年4月13日 / 豊平館
「 林家正雀 独演会 」
林家正雀 「子別れ(上)」
(仲入)
林家正雀 「子別れ(中)、(下)」
札幌にはもちろん寄席はないので
たいていは大ホール、小ホールでの落語会となります。
今回はちょっと違う。
「豊平館」という重要文化財になっている明治の洋館での落語会。
たぶん舞踏会でも開催されたであろう宴会場には
暖炉があって、赤絨毯が敷かれ、シャンデリアが吊られている。
そこに1メートルくらいの高さの高座が設けられていて
正雀さんは階段をよいしょよいしょ昇る。
たぶん、全部で100人くらいの、こじんまりとした集まりで
ホールとは雰囲気が違う。
高座までの距離も近く、正雀さんの表情や仕草もよく見える。
正雀さんの指が、いいなあ、と思って見ていた。
「子別れ」は長い長い噺で
(上)のあたりは省略されることが多いらしいのだけど
正雀さんは仲入りを挟んで全編を聞かせてくれた。
貴重な機会である。
しかし、まあ、
(上)のあたりが省略されがちっていうのは
わかるような気がする。
噺が終わったあと、質問コーナーみたいのが始まった。
何か質問ありませんか、などと、客席に問いかける。
僕はこれが苦手だ。
落語では初めてだけど、ダンスや演劇や
アーティストの講演会なんかで、たまにある。
こういう質問コーナーで手を挙げるのは
だいたいツラの皮の厚そうな人物で、
物知り顔で問いかける内容も
たいがいナルシシズムの発露のようなもので、
とにかく心底どうでもいいのだけど
退席するわけにもいかず、ただただ苛立たしい思いをする。
今回も、まあ、そんなもの。
苛立たしい質問コーナーが終わって、お開きかと思ったら
正雀さんは、こう言った。
「 じゃ、あたし、踊ります 」
えっ? なに? 踊る?
びっくりしてたら、正雀さんは高座から降りて、
着物をひょいひょいとたくしあげて、
日本舞踊をふたつ踊って、出ていった。
踊り・・・
正雀さん独自のサービスなんだろうか。
わりとよくあることなのか。
よくわからないなーと思いながら席を立って、また驚いた。
階段の降り口のところに正雀さんが立っていて
ありがとうございましたとひとりひとりに
ていねいにお礼を言っている。
ホール落語での落語家と客の距離感って
歌手と客、役者と客、と同じような感じだけど
ここでは何かが違っている。
そんな場面に居合わせたことはないけど
なんか、あれだ、どちらかというと
「料亭に呼ばれた芸人」に近い感じだ。
噺のあとに、踊って、お見送りして。
ホールならばアーティストっぽいポジションなのが、
もう、いきなり、たいこもちみたいだ。
これが「営業」ってやつか、と
芸人の悲哀みたいなものを勝手に感じてしまった。
むむぅ。