20080601

ジロ読み(20°Tappa):通りすがりのロシア人、ひらひら泳ぐスペインの金魚

今ジロ最高峰「チーマコッピ」の日の我が家の夕食。
タコのマリネ。
サンマの香草パン粉焼き(パルミジャーノレッジャーノ風味)。
トマトとモッツァレラチーズのパスタ。

ジロ各ステージのゴールゲートには、
パルミジャーノレッジャーノの文字が見える。
そしてポディウムでは真っ先に
ステージ優勝選手にパルミジャーノレッジャーノの箱が渡される。
「パルメザンチーズ」「粉チーズ」など称する
類似粗悪品の流通に抗するため「本家」をアピールする広告なのだろうが、
スポンサー主ということになると、どこなのかわからない。
組合でもあるのか。あるいは地方の行政団体なのか。

ともあれ、「山の王」セッラが
3箱目のパルミジャーノレッジャーノを獲得した。
クライマーとしてジロ3勝は驚異的であり、賞賛に値するが、
ただ、総合優勝争いにおいてもはや眼中になしと判断された結果である。
とはいえ、2分35秒差の5位へ、ジャンプアップ。
今さらのがんばりを見せて2着に入ったシモーニのとっつぁんも
もう相手にされていないから先行を許されたに過ぎない。
とっつぁんにもパルミジャーノレッジャーノの1箱くらい
持って帰ってほしかったところだが、残念。
まあ、チーズくらい自分で買えばいい。

コンタドール、堅牢なり。
19ステージにて、サヴォルデッリを使ったディルーカの攻撃を受けたが、
コンタドールに致命傷がなかったのはクレーデンが身を呈したためだろう。
双方被害は大きく、サヴォルデッリは早々に遅れ、クレーデンはリタイアした。
みんなカードを切り尽くし、身ひとつの状態。
小さな集団のなかに上位選手がひしめき合う。
コンタドール、リッコ’、ディルーカ、ブルセギン、メンショフ、ペリツォッティ。
これはコンタ包囲網に見える。
コンタドールは孤立無援、全方位から攻撃を受ける立場に見える。
しかし、最後の最後まで、この集団はコンタドールの支配下にあった。
コンタドールに大きな余力があるようにも思えないのだが
包囲網に入っているというよりも、手綱を引いているように見えてくる。
君臨し、揺るがない。
もはや敵ではないと見られたセッラ、シモーニだけが脱走を許された。

逆に、ディルーカは脱落。
2分差を詰めた19ステージの荒技が、ディルーカ自身を無傷でおくわけはなかった。
満身創痍のディルーカは、通りすがりのロシア人に背負われて帰ってきた。
カルペツの大きな背中に隠れるように走るディルーカは、
ほんとうに背負われているように見えた。
ここまで存在感ゼロだったくせに、こんな場面に限って現れるなんて、
カルペツのピナレロには笑いの神が宿っているのだろう。

TTが苦手で、あとのないリッコ’は
この日に仕掛ける以外になかっただろうに、何もできずに終わった。
背水の陣で、無謀でもアタックかけるべきではなかった。
意地を見せてほしかった。
「4秒」を詰められないまま、最終日TTを残すだけとなった。
ディルーカ脱落で、総合優勝争いは実質的にコンタドールとリッコ’に絞られた。
TTではリッコ’よりコンタドールが確実に有利、
絞られたというより、ほぼ決まったと言っても過言ではない。
一方、表彰台に乗りたい選手間の3位争いが激化。
ブルセギンが3位を守り切ることを期待したい。

あと、触れにくい微妙さだったので触れてこなかったが
ずっと気になって仕方のない微妙な選手、
《ケスデパーニュ》のホアキン・ロドリゲス。
いつもいつも前方のレース展開のなかにいて、
ヒラヒラと目につくのだけど、彼が何をしたいのかわからない。
気がつけばそこにいて、気がつけばもういない。
彼はなんなんだろう。
身にまとうスペインチャンピオンジャージは
赤と黄色のどぎついカラーリング、しかも魚鱗模様、
どうしても金魚のように見えて
ホアキン・ロドリゲスの名を聞くたびに「ほあ金」と頭に浮かぶ。
「ほあ金」は今日もヒラヒラとレースのなかを
意味もなく泳ぎ回っていた。
そのくせ、「4秒」にあえぐリッコ’が
喉から手が出るほど欲しいボーナスタイムをムダに食ったりして、
案外「ほあ金」が明暗を分ける存在だったりして。