20070415

日曜文学室




彼女は、彼女の《つめとぎ》のうえに静かに座り、

私たちに向けたまなざしで、無言のまま問い返していた。

「たましいの飢餓でひとは死ねるかしら?」

窓のそとに季節はずれの雪がまた舞いはじめていた。

まるで雪のように、と私たちは思う。

彼女の《白い部分》は、あまりにも白い、まるで雪のように。

彼女は、彼女の《つめとぎ》に座ったまま目を閉じて、

それから長いあいだ、そこに座り続けていた。

いつまでも、いつまでも、座り続けていた。


  (『天国までの4000グラム』より)