20080323

カルヴィーノ/カンチェラーラのミラノ-サンレモ

プリマヴェーラ、
ずばり「春」と愛称されるクラシックレース。
イタリア北部、ミラノからサンレモまで298キロを走る。

2008年、99回大会では
道路工事のためサンレモ市内のゴール地点が変更になり、
ローマ通りではなく、イタロ・カルヴィーノ海岸通りになった。
このコース変更が展開を左右するのではないかと
レース前から予想されていた。

気になったのは、コース変更後の
ゴール地点になった通りの名称だ。
『冬の夜ひとりの旅人が』という
美しいメタフィクションを愛する者にとって
イタロ・カルヴィーノ海岸通りというゴール地点に
興味をもたずにはいられなかった。

イタロ・カルヴィーノ。
文学が好きなら名前を知らない者はない。
20世紀を代表する偉大な作家のひとりだ。

さっそくグーグル検索をするも、
この通りの名称の由来は(日本語情報では)見つからなかった。
だけど、文学者イタロ・カルヴィーノを記念した命名であることは
まず間違いないだろう。
カルヴィーノは、生まれこそキューバだったが
2歳から20歳までサンレモで育ったのだから、
サンレモが「カルヴィーノの故郷」を自負しても
詐称には当たらないだろう。
そして、また、ミラノ-サンレモのゴール地点として
カルヴィーノの名をもつ通りが選ばれることには
いささかのわけがあると、僕は見ている。

というのも、
カルヴィーノは「新たな千年紀のための六つのメモ」と題して
21世紀の自転車乗りである僕たちに
6つの大切な価値を書き残しているのだ。
6つの価値とは---

 ・Lightness : 軽さ
 ・Quickness : 速さ
 ・Exactitude : 精密さ
 ・Visibility : 視認性
 ・Multiplicity : 多様性
 ・Consistency : 持続性

まさに、自転車のすべてが
6つの要素により表現されている。

というのは、まあ、無意味なウソで、
上の6項目は、ほんとうは、
カルヴィーノの文学的遺書と言われる
「カルヴィーノの文学講義」の章題だ。
もちろん自転車ではなく文学のことを語っている。

でも、やっぱり、まるで自転車の話のようだ。

99回ミラノ-サンレモにおいて
軽さ、速さ、精密さ、視認性、多様性、持続性を体現し、
たったひとり集団から抜け出して
イタロ・カルヴィーノ海岸通りのゴールを切ったのは
27歳のスイス人、ファビアン・カンチェラーラだった。

今年もカンチェラーラは強い。
2月にツアー・オブ・カルフォルニアでステージ1勝。
3月にはシエナ近郊でのモンテ・パスキ・エロイカ優勝。
(ちなみにカルヴィーノはシエナで没した)
直前のティレーノ-アドリアレィコでは総合優勝。

カンチェラーラと言えば、
世界選手権タイムトライアル2連覇、
ツール・ド・フランスのプロローグ圧勝のイメージが強烈で、
決まって「タイムトライアルスペシャリスト」と呼ばれるが
2006パリ-ルーベ、2008ミラノ-サンレモの覇者を
いつまでもTTスペシャリストと呼ぶのは、不正確ではないか。

ともあれ、「春」はきた。
次は過酷な「北のクラシック3連戦」、
なぜだか石畳にも強いカンチェラーラには
よりいっそう注目しなければ。