20080525

ジロ読み(14°Tappa):空を行く者なき、地上のたたかい

ドロミテ山塊3連戦、初日、頂上ゴール。
山岳賞ジャージを着る《ナヴィガーレ》エマヌエーレ・セッラが
13人の逃げ集団から、登りで単独抜け出し、そのままステージ優勝。
セッラ、強い。そして、小気味よい。

第2ステージの記事で07年総合上位選手の動向を整理したとき
セッラについては
「下位カテゴリ《ナヴィガーレ》のエース、毎年このくらいの位置で走り続ける。
 そういう仕事もある。総合1ケタ順位を目指してほしい。」
と書いた。
現在、総合では7分33秒遅れの26位。
栗村さんが「山岳賞のために、あえて総合順位を落としている」と言っていたけど
ほんとうに今年は目標を、山岳賞とステージ優勝に絞り込んでいるようだ。

セッラのことは、特に印象はなく、名前も覚えていなかったのだけど
13ステージを見ていて急に思い出した。
07年ジロの8ステージ、終盤に《ティンコフ》ブルとともに逃げて、
ブルとセッラが逃げた!、ブルセラコンビだ!、とダジャレで実況されていた、
あのセッラだったか。
07年、ブルもセッラも勝てなかった。
08年、ブルもセッラもステージを穫った。

セッラに続いて、単独2位でゴールしたのは、キリエンカ師匠だった。
ニヤリ。

ドロミテ突入で、総合争いも激化。
優勝候補のエースたちの脚の調子が見えてくる。
クレーデンが遅れ、コンタドールが遅れ、ディルーカが遅れるなか、
思いがけず余裕の走りを見せたのが《ラボバンク》デニス・メンショフ。
メンショフがひょいひょいと登っていく。
しばらく付いていたシモーニが、リッコが、遅れる。
メンショフに、必死な様子はない。

メンショフ、このジロに臨むモチベーションがどれほどあるかわからなかったが
なるべくなら活躍してほしいと思っていた。
このジロには、はちゃめちゃな経緯が絡み合った結果として、
07年のジロ、ツール、ブエルタ、グランツール覇者3人が揃い踏みとなった。
一般的な評価として、グランツールの「格」は、ツール>ジロ>ブエルタ。
したがって、コンタドール>ディルーカ>メンショフ。
ここでメンショフが大敗すると「やっぱりブエルタは格下」と見られるに違いなく、
そうなってほしくなかった。
だから、ブエルタ覇者として、メンショフには意地を見せてほしい、
ジロ覇者ディルーカ、ツール覇者コンタドールとのたたかいで
勝たないまでもせめて大敗しないでほしい、
と思っていた。
ところが、どうだ。
ドロミテ初日、むしろメンショフはディルーカとコンタドールを置き去りにして、
総合順位もジャンプアップ。
1ステージだけで判断できるものではないけど、十分にたたかえる感触。
いいね、いいね。

さらに、さらに。
地味に、しかし、堅実に
「ロバ飼い」ブルセギンもディルーカ、コンタドールに先着して
総合3位につけた。
これまた、ニヤリ。

勝負所を迎えて、かなり面白くなってきた。
タイム差2分のなかに優勝候補がひしめきあっている。
奇跡のように突出し、人間離れして強く、不審なほど圧倒的な、
空を飛ぶように山を登るスーパーマンのような選手はいないように見える。
顔を歪めてしのぎを削る、泥臭い人間同士の、地上のたたかいに見える。
面白くなってきた。